位置決めピン (1)

概要

位置決めピンとは

  • 複数の部品間の 位置関係を高精度 に再現・保持するために用いる円柱状の機械要素.

  • 挿入する穴との幾何公差に基づき、ズレや回転を防ぐ.

メリット

  • 高精度 (ボルト等で必要な"ガタ" を小さくできる).

  • 脱着可能 .また, "位置決め"機能と"固定"機能を分離可能


基本の使用方法

  • ピンの固定と脱着

    • 基本構成: 一方を 固定 (圧入 or 軽圧入),もう一方を すきまばめ にして脱着可能とする.

    • 例:m6やp6のストレートピンに対して、 穴は下側H7(ピッタリ),上側H8~H9(抜ける)、ような設計.


  • ピンには, 「取り付け側」「位置決め側」 の2種類がある.

    • 取り付け側は,基本は外さない.

    • 位置決め側は,取り外しも可.ピンに横から押し当て,点接触で位置決めする場合もあり.

    • 取り付け側は、"圧入"または "ねじ" (おねじ・めねじ)

    • 位置決め側は、基本は圧入、サイドから押し付けで使用、など.


  • ストレートピン は対称・省スペース設計に有利. 最もオーソドックス な位置決めピン.


  • 径が切り替わる「 段付きピン 」には, "大頭"と"小頭"の2種類がある.

    • 段差で「止まり」がつけられる.異なる直径と公差(m6, p6, g6, etc.)がつけられる.


  • 精度の高い穴加工( リーマ仕上げ )が必須となる(図面に記載するのを忘れない).

    • 公差穴(H7/H8など)を正しく実現するには, 下穴ドリル+リーマ加工(の指示)が必須


  • ピン長さは挿入深さ+逃げしろを見込んで設計.

    • 片側5 mm程度の挿入でも成立するが, 逃げ(+0.5〜1 mm)を考慮して穴深さを設計 .

    • 底付きは厳禁.


  • ボルト締めとの併用も可能.ピンで位置精度,ボルトで固定.


穴の大きさ

  • 記号: h7, H8, H9, g6 等.

  • 穴とピン:

    • 穴 : H7, H8, H9, H6

    • ピン: h6, g6, m6, p6

  • 大文字と小文字: H7やh7等.公差の プラス・マイナス

    • 大文字:プラス公差

    • 小文字:マイナス公差


サイズ表記の一覧

ピン・穴の代表的な公差と特徴

公差記号

対象

分類

用途・意味

備考

H7

基準(最も一般)

基準寸法と等しい公差穴(0〜+15μm程度)

リーマ仕上げが必要

H8

すきまばめ(標準)

少し余裕のあるすきまばめ(0〜+27μm程度)

脱着を容易にしたいとき

H9

すきまばめ(緩め)

H8よりもさらに緩く,頻繁な脱着や精度不要な嵌合に

ガイド穴や固定不要部に

m6

ピン

軽圧入(中間ばめ)

軽い圧入.固定性がありつつ加工容易

ピンを片側固定したい場合に適す

p6

ピン

しまりばめ

かなりきつい圧入.半永久固定用

外れ防止が重要な場合に

g6

ピン

すきまばめ(軽)

H7〜H9穴に対して適度なすきまを与えるピン公差

脱着が容易でピンが抜けやすい

h6

ピン

基準(標準)

シャフト基準寸法と等しい(0〜−16μm程度)

ストレートピンで多用

0/-0.01

ピン

独自指定

g6よりややタイト.高精度のすきまばめ用途

製図時に数値で明示が必要


Note

  • 穴の公差は通常「H7」または「H8」が位置決めピン用途で一般的である.

  • ピンの公差は「g6(すきま)」「m6(軽圧入)」「p6(圧入固定)」を使い分ける.

ピンと穴の用例

  • g6ピン + H8穴: 脱着できる位置決め .実験装置や治具向け.

  • m6ピン + H7穴: 標準、しっかり固定 (抜けなくはないが面倒).

  • p6ピン + H7穴: 半永久的な圧入固定